雨の紗幕に映す初めての姿はどんなものがいいでしょうか
雨ってとても素敵で、自分の罪を禊払ってくれるような、悲しみを涙と一緒に流してくれるような感じの冷たくはあるが、温かい。自分のことを考えるときは必ず雨の中と決めている。自分の過去には、禊が必要で。
自分が自殺に追い込んだ。殴った。蹴った。
実際に自分はしていないのに自分がしたように考えるのは、小さいときからの癖です。よくもあり悪くもある癖。
その日も雨が降っていて、僕はいつも通り、近道して帰るために公園を通る。近道をするために公園を通るのか、自分の奥に眠る正義感のために公園を通るのかはわからない。でも雨の日は必ず公園を通る。ベンチに横たわる少年は今日も傷だらけで、眠っている。もとは真っ青だったであろう服も藍色になっている。短パンの下から見える青くなりかけたあざは僕の心にずしりと重くのしかかる。「こんなところでなにやってんだよ、早く家帰れ」自分の口から出た言葉に、哀れみは込められていない、正直な気持ちだったと思う。
家に帰って、カバンをおろして机の椅子にだらだら腰掛ける。雨だから外に行くのがめんどくさくて、家でゲームの世界に浸る。ゲームの中でも雨が降っていたので、ゲームの世界の自分の気持ちを想像してみた。来る敵来る敵を倒しまくる自分の分身はどんな事を考えているのか。ゲームのストーリーじゃない、本当の気持ちを考えたときに「正義感か、」自分に問いかけるように自分の口から出た言葉は、自分は悪くないのに、という感情も同時に浮かび上がらせた。そのあと、タオルをもって公園に走る自分に驚きはしなかった。自分はこういう人間なのかもしれないと。
公園についたときには、警察と救急が公園をふさいでいた。周りには野次馬らしき女性がいて話しを聞いてみると、ベンチで少年が死んでいるといった。女性にそうですかと言って僕は、自分の気持ちを押し殺し、その場を後にした。自分はこういう人間だ。