20歳夢追い人から40代社畜嫁が怖いになるまで

20歳一人暮らし大学2年生。ドラム、小説、オードリー、旅行が大好きです。自分の言葉を持っている人が好きです。

あおぞらリボン

こんにちは、「境遇」という湊かなえさんの作品を読ませていただきました。


私が読んだのは、「告白」「リバース」に続いて三作品目だったのですが、今回一番衝撃を受けたのはラストなのですが、ラストの衝撃だけでは説明しきれない衝撃がありました。


この作品は主人公の陽子の息子、裕太くんの誘拐事件で真実を公表しろと書かれた脅迫状を受け取るところから始まり、陽子自身の過去や、児童養護施設にあずけられたという同じ境遇を持つ親友晴美との関係を知っていくというようなお話です。


物語のラストで裕太くんを誘拐し、脅迫文を事務所に送ったのは、晴美だったことを知ります。晴美は陽子が殺人犯の娘で、自分がその被害者の娘ということを知り、なぜ、殺人犯の娘が出した絵本がベストセラーとなり、結婚し、幸せな人生を送っているのかという憎さから、行動をおこしたといっています。ただ、晴美がそれを知る以前から作ってきた陽子との絆があるので、陽子が自分の両親が殺人犯だということを知って、苦しむのを見るのがつらかったと告白。


しかし、最後の最後で、ほんとうは晴美が殺人犯の娘で、陽子はその事件とは何の関係もないことが発覚した。陽子は最後に晴美に裕太を誘拐したことを許すというわけじゃないけど、終わりにしようといっている。


この終わりにするとは自分たちの境遇に縛られて生きていくことを終わりにしようということだと思う。お互いがどんな環境で生まれてきて両親がどういう人かどうかということが大事なのではなくて、そこから、晴美と陽子が作り上げてきた絆のほうが大事なんだということだと思う。


この作品には陽子の夫の正紀も境遇に恵まれないことが書かれている。陽子は有名なテレビ番組で、晴美は新聞記者なので、新聞で、正紀は会見でそれぞれ自分の過去を告白している。ここには、三人の今までの境遇に縛られた考え方からの脱出を試みようという決意が感じられる。境遇は消えない。だけど、境遇を受け止めて、自分自身の行動が自分という人間を表しているんだと、主張しているようにも思う。これは、境遇で悩めるすべてのひとへのエールだと思う。


境遇に関して、世間の風当たりはまだ強いと感じる。テレビに父が出ていたら、父と比べられ、父ありきの自分として世間に受け入れられる。初登場の時にだれだれの息子、娘と紹介されたら、それをずっと背負ってテレビに出ていく。それで、父が不祥事を起こしたら、自分も責任を負う。家族のせいでもあるんじゃないかと。世間は本人だけではなく、家族も逃がさない。


ただ、私の身の回りの人間を殺した人の息子が幸せな生活を送っていたら、私もそれを許さないと思う。この作品のように、相手の境遇と自分に起きたことを受け入れて、生きていくしかないのだと思った。


今から話す内なる怒りに関しては今後黙っていたいのですが、関係ない人間が、八つ当たりのようにオンラインで人を誹謗中傷するのは、悪い文化だと思う。インターネット社会がもたらした不利益だと思う。


自分が高いところから見下ろしている人間でいたくないからこそそうおもうのかもしれない。自分は高いところから見下ろしているようにふるまう癖があってそれをずっと治したいと思っているかもしれない。それをコンプレックスにしているからかもしれない。中身のない人間だけど、それを嫌っているからかもしれない。関係者以外が人を悪く言う世間に嫌悪感があるし、何より、自分が一生そうなりたくないと思っているから。でも自分は気を抜いたら、そっちに行ってしまうかもしれない。中身がある人間ではないから。ただ、中身がない人間を脱したいとも思ってます。そのために私はいつまでも発信者でいたいと思います。


あえて、誹謗中傷される側でいたいのです。自分がする側に回ることがないように、発信者でいたいと思いました。以上です。

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